消火隊、半消火隊。

医療従事者として働き始めて５年経つが、いまだ、ドクターからの電話は慣れない。
勉強不足と言ってしまえばそれまでだけど、やはり、ドクターの質問は、専門的なモノが多いので、かかってくる度に、「ぎゃ〜、先生だ〜。私ごときが答えられる質問でなかったら、どうしよう〜。」と、質問される前から要らぬ心配をして、極度の緊張を強いられるから、たいへん疲れるのだ。

「ラコールって、うちにあるよね。あれって、しょかたい？はんしょうかたい？」

まるで、「今日の天気は、晴れかな？雨かな？」みたいなノリで聞かれ、「明日は、晴れですよ〜♪」と、返事ができれば、何も問題はなかったのだがど、やはり、実際にはそうはいかなった・・・。

（ラコール。ラコール。確かにうちにある経腸栄養剤だわ。術後などの栄養補給に使用する、ちょっとカロリーメイトみたいなものよね。
それは、わかる。それは、わかるんだけど、「しょうかたい」？「しょうかたい」って、なに？「松果体」？「小化体」？「消化隊」？・・・って、栄養剤が火を消すのかっっ！！）

もう、パニックである。
ただでさえ、とろい有間の脳細胞をフル活動させて、コレである。
これ以上考えても、どうせ、「ひとりボケ＆つっこみ劇場」をくりひろげるだけなので、とりあえず、先生を待たせて、情報収集の旅に出かける。

まずは、添付文書（薬品の効能など詳細が書かれた紙）を発掘しに行き、「しょうかたい」の文字をさがす。
見つからないと、行く先々で、文献をさがし、出会った人に訊きまわる。
そして、ある程度の知識を得て、また、先生の待つ電話に挑むのだ。

しかし、今回は、ちょっと、待たせ過ぎたらしい。

プッ、ツー、ツー、ツー・・・・・・。

先生、ごめんなさい。ラコールは「半消化態」でした。